押し入れに引き出し

PCの起動を習慣化することを目標に掲げています

起床、そして裏切りと決意

他人と一緒に寝たくない。

一年前に泊りがけのオリエンテーションが学部内であったのだが、同室だった人曰く「めちゃくちゃデカい声で寝言言ってた」らしい。私は普段どれだけ頑張ってもちいせえ声でしか喋れないため、これを聞いた時とても恥ずかしかった。寝ている最中に覚醒時よりデカい声で無意識に喋ってるとか嫌すぎる。未成年なので酒を飲んだことがないが、私は酔ったら声も態度もデカくなる人間なんだろうな。意識を手放してしまった途端に対人関係においていつもなら抑圧されてる面が全部出てしまいそう。他人と一緒に飲みたくないな。

話が逸れた。寝言を言いがちなだけならまだしも日中よりも大きい声でそれを言うなんて、聞いた人からしたら普段からもっと声張れよと思われることうけあいである。

しかし私自身は自分の寝言がうるさいという実感がないため、眠っている間の音声を録音してみることにした。いびきを改善するためのアプリに、睡眠中に大きな音を感知したら自動で録音してくれる機能があるらしく、それを使用した。本来の用途を守る気ゼロである。

単純な寝言のうるささ以外にも、その内容自体にも興味があったため意気揚々とアプリをセットして、眠りについた。

その晩、「目を覚ましてすぐに録音された自分の寝言を聞く夢」を3回くらい見た。一体自分が何と言っていたか聞くのが楽しみで仕方なかったのだ。正直寝言のうるささを検証したいということより何か面白い寝言を言っているのではないかという淡い期待の方が気持ちの面では勝っていた。

そして翌朝、ヘッドボードに置いていた照明のリモコンを誤って落としてしまった時の音で目を覚ました私は、早速録音したデータを再生してみた。

睡眠中の記録は、無音状態の時は基本横ばいに表示されて、何か大きな物音がした時だけ山なりに表示される。まずそのグラフを見て、あまりの波の無さに驚いた。平坦だ。たまに盛り上がっている箇所があるけれど本当にちょっとした山で、到底何か喋っているようには思えない。

いやまだそうとは決まっていないじゃないか…期待を裏切られるのではないかという不安に苛まれながら、私はちっさい山が出来ているあたりを再生してみる。…ザーーうーーんガタッ……どの山を再生してもずっとこんな様子である。え、何これ?つまんな…マジで寝息と環境音しか録れてない。自分の寝息以上につまんねー音声は多分どこ探してもない。最後の山、つまり起きる直前の音声も再生したがリモコンが床にぶつかった音とそれにびっくりした自分の声しか録れていなかった。

あまりにも不甲斐ない結果に終わってしまい、悔し過ぎる。こうなったら何かしら寝言を録れるまで録音を続けるしかない。挑戦は続く。 ~完~